「ちょっといいですか?」
残業時間中、現場から部屋に戻ろうとして声をかけられた。
(あぁ、そういえば今日なのか)
長年一緒に働いていた、ベトナム人の子たちが辞める日だった。
*
年末の忘年会で、年明けには何人かが退職するのだと聞いた。
真面目という言葉が似合うし文句も聞いたことがないし、どこに移動しても可愛がられるような子たちだった。
途中コロナもあって一時帰国もできないこともあったが、飛行機が回復して国に帰れたときは、嬉しそうにお土産話を聞かせてくれた。
その中の、一番長く勤めていた子が挨拶に来てくれた。
残業していて良かった。そうでなかったら会えなかったかもしれない。
いや、彼のことだからわざわざ会いに来てくれたのかも。そういう気遣いができる子だ。
「沙結月さんとは、日本に来たとき初めて〇〇の仕事を教えてもらいました」
今回辞める子たちの中でも、一番関わりがあった子だった。
「分からないことや、いろいろなことを教えていただきありがとうございました」
入社したとき、あまり日本語が上手ではなかった。けれどどんどん話せるようになっていって、今は会話に困ることは全くない。私もどうやったら伝えられるかや文化の価値観の違いなど、たくさんのことを勉強させてもらった。
「私、ベトナムで料理のお店を出したいんです!だから、次の職場で料理の勉強をします」
(昼休みも仕事が遅いときでも、帰ってからずっと日本語の勉強してたって聞いたよ。そんな君ならきっと大丈夫)
「沙結月さんも、お元気で、頑張ってください!」
「......頑張ってね!元気でね!」
初めて挨拶をしたとき、キラキラと輝く目をしていた彼。今でも変わらない、同じ目をしていた。
どうか、彼らのこれからに幸多きことを、祈り願っています。
ありがとう。
昨日と今日と明日と。日々の小さな幸せに感謝して❤️
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